国税局のデータによると、相続税は平成27年改正により課税者数が大きく増えましたが、全体の割が的には8.5%にすぎません。今日は贈与税のお話をしますが、10人に1人もかからない相続税と違って、贈与税は10人中10人が馴染みの深い税金です。
贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つがあります。

「暦年課税」が一般的ですが、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いた残りの額に対して課税されます。そのため1年間にもらった財産の額が110万円以下であれば贈与税はかからないし、申告も不要です。この110万円までの暦年贈与を小・孫に対して毎年行うことにより相続財産を減らし、結果として相続税対策になります。

贈与税のもう一つの課税方法として「相続時精算課税」という方法があります。これは60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。これを選択すると親や祖父母からこや孫へ最大2500万円までの贈与にかかる贈与税を非課税にできます。しかし、この相続時精算課税贈与は、贈与を実行しても相続税計算上の相続財産を減らすことにはならず、結果として相続税の節税効果はありません。しかも、一旦相続時精算課税贈与を選択すると後で暦年課税に戻すこともできません。

そんな相続税節税効果のない相続時精算課税贈与をどういう場合に利用するのがよいのでしょうか?私なりに考えましたので、ご利用下さい。

ケース1.相続税がかからないご家庭での子供への贈与

チマチマ毎年110万円ずつ贈与するよりは、どのみち相続税が課税されない家庭であれば相続時精算課税を選択して2500万円までの大きな贈与を贈与税の負担なくして一気にできます。

ケース2.親「年老いた私がカネを持っていても宝の持ち腐れだ。将来性はあるけど今カネのない息子へ」

不要な財産を子供に生前贈与しましょう。

ケース3.親「子供は兄弟間の遺産分割でもめそう。とくに長男のアイツはお人よしだし。」

お人よしの子供に生前贈与しときましょう。

ケース4.子「親に遺言を書いてもらったけど、親は優柔不断なのが心配だ。えっ、遺言って書き直せるの?」

特定の不動産をもらいたい子としては、「後で書き直せる」不確定要素の高い遺言よりは生前贈与してもらって早めに権利を確定したい。そんな時は贈与です。

ケース5.子「認知症予備軍の親の生活資金の管理に家族信託がいいのはわかっている。でも、時間もないしおカネもかかるし。」

認知症対策としての家族信託は有用なのですが、時間もかかるし、専門家費用もかかる一面があります。これに対して信頼できる子供に精算課税贈与する方法により、簡単に対策が可能です。

相続時精算課税贈与は翌年の確定申告の3月15日までにその選択届出書を税務署に提出しないといけません。仮に提出しなかった場合は暦年贈与とみなされ、多額の贈与税が課税される可能性がありますので要注意です。詳しくは相続贈与に詳しい税理士にご相談下さい。


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