相続コラム はなまる知恵袋
遺言書の検認は絶対に必要?手続きの流れや弁護士への依頼費用も解説
更新日: 2024 . 12.4
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更新日: 2024 . 12.4
遺言書は遺産相続において重要な書類です。しかし開封には検認手続きを必要とするケースがあり、勝手に開封してしまうとペナルティが発生しかねないため、注意が必要です。そのため、早く内容を確認したいと感じても、まずは検認が必要かどうかを確認しなければなりません。
本記事では遺言書について、検認が必要なケースとそうでないケース、実際の手続きの流れなどについて解説します。参考にして、遺言書を適切に取り扱えるようになりましょう。
弁護士
宮部 明典
[弁護士法人山下江法律事務所]
遺言書を検認する目的は以下の2つです。
仮に検認なしで誰かが勝手に開封してしまうと、その人が内容を改ざんしてしまい、正しい内容がわからなくなる可能性があります。そのようなトラブルを防ぐため、家庭裁判所にて第三者である裁判官が、相続人の立会いの下遺言書を開封する作業を検認と呼びます。
ただし、検認手続きは遺言書の効力の有無を判断するものではありません。検認手続きを経て開封したものの、遺言書自体が無効なものであり遺産相続に利用できなかった、という事態もあり得ます。
検認が必要な遺言書の種類は限られています。以下の表を参考にしてください。
検認が必要かどうかのポイントは、保管場所が公的機関であるかどうかです。役場や法務局などで管理されていれば、第三者が手を加えられないうえに、原本がコピーされて保管されています。よって改ざんのしようがなくなるため、検認も不要となるのです。
一方自分で保存する場合、他人に勝手に開封されると、改ざんされるおそれがあります。そのため、検認手続きが必要です。
なお、自筆証書遺言は従来自力での保管が基本でしたが、現在は自筆証書遺言書保管制度が制定されています。この制度は、手続きを踏めば自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度のことです。また、被相続人が亡くなった際に遺言書の存在を相続人に通知できたり、遺言書としての効力があるか簡易チェックを受けられたりというメリットもあります。
相続人の立場として、遺言書の検認が必要な理由は主に2つです。
いずれも重要な理由であるため、面倒だからなどと軽い気持ちで遺言書を開封する行為は避けましょう。
検認が必要な遺言書を用いて相続手続きを進めるには、検認証明書が必要です。具体的に検認証明書が必要となる手続きは、以下のとおりです。
つまり、検認なしで遺言書を相続関係の書類として活用することは、困難と言えます。
また、検認なしでは内容を確認できないため、遺産の内容以前に相続すべきかどうかの判断さえできない状態となります。遺産はお金など正の遺産だけでなく、借金など負の遺産もあるため、内容を確認しないことはリスクの高い行為です。
検認自体に期限はありませんが、相続放棄などの手続きには期限があります。後回しにしていると、遺言書を検認し開封した時には、相続手続きの期限がすでに過ぎていたという事態になりかねません。
手続きの申し込みから実際の検認までも数週間~2か月程度かかるため、可能な限り早めに検認を済ませてしまいましょう。
検認が必要であるにもかかわらず、勝手に遺言書を開封してしまった場合、ペナルティが発生するケースがあります。具体的には、5万円以下の過料が発生する可能性があります。
そのため、遺言書を見つけたからといって、慌てて開封してはいけません。まずは検認が必要かどうかを判断し、必要であれば早めに手続きの申請を行いましょう。
実際に遺言書の検認を行う流れは、以下のとおりです。
繰り返しになりますが、ステップ1から2までは数週間~2か月程度かかります。スケジュールに注意して、迅速な手続きを心がけましょう。
まずは検認の申し立てを行いましょう。基本情報は以下のとおりです。
まずは基本情報を踏まえ、申し立てを行いましょう。受理されると、具体的にいつ検認を行うか日取りが通知されます。
検認の日、申立人は必ず出席しなければいけません。しかし、他の相続人の出欠は任意であり、全員揃っていなくても検認は進められます。
検認期日になったら、実際に検認をしてもらいます。申立人は、以下の物を持参してください。
場所は家庭裁判所です。申立人は、未開封の遺言書を裁判官に提出します。裁判官は、申立人などが立ち会っている前で開封して、内容を検認します。
検認が終了したら、検認済証明書の申請を行います。検認済証明書を貰い忘れると、せっかく検認した遺言書が執行できなくなるため、忘れずに申請してください。
申請には申立人の印鑑と、収入印紙150円分が必要になるため、準備しておきましょう。
検認が終わった遺言書の原本は申立人に返還されます。他の相続人が必要とする場合は、コピーを取ってください。なお、検認時に欠席した相続人に対しては、後日検認済通知書が送付されます。
遺言書検認の申立て書の書き方は、以下を参考にしてください。
【引用:裁判所公式Webサイト】
なお、記載例が閲覧できるページで、書式のダウンロードも可能です。ダウンロードしたら印刷を行い、手書きで記載しましょう。
遺言書検認の申立て手続きは、弁護士に委任することもできます。自分で申し立てを行う自信や時間がないときは、特におすすめです。
弁護士に委任するメリットは、以下のとおりです。
遺言書検認の申立て手続きには、書類を作成する、取り寄せるなどさまざまな作業が必要ですが、それらのほぼすべてを任せられる点がメリットです。ただし、検認自体には必ず申立て人本人の立会いが必要です。
なお、弁護士に手続きを委任する場合は委任状が必要となります。一般的には、実際に契約を締結する際に委任状の記載を求められるため、指示に従って作成してください。
遺言書検認の弁護士費用は、約10〜15万円が相場です。内訳は以下を参照してください。
上記をトータルすると、およそ10〜15万円になるケースが一般的です。
遺言書の内容を検認後、相続放棄を行うことも可能です。
前述しましたが、相続される財産はお金など正の遺産とは限りません。状況によっては借金など負の遺産が与えられるケースもあります。そのような場合は、相続放棄してしまうのが良いでしょう。
ただし、相続放棄は黙ってできるものではなく、手続きが必要です。さらに、相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3か月以内と定められています。相続放棄すると判断した時、すでに相続放棄可能な時期を過ぎていたという事態にならないよう、遺言書の検認は早めに行ってください。
遺言書の検認について、不安なことははなまる相続にご相談ください。
相続関連のことに対し、不慣れな人が不安を抱くのは自然なことです。特に遺言書についてはスピーディーな対応が要求されるため、不安から迷ったり悩んだりする時間は無いと考えるほうが良いでしょう。故人を悼む時間をゆったり取るためにも、手続き上のことは専門家に任せてしまうのがおすすめです。
はなまる相続では、遺産相続関連のことについて各部門のエキスパートが揃っているため、さまざまなお悩みをトータルサポートできます。悩みごとに別々な依頼先を回る手間もありませんし、悩みの相談から具体的な事務処理まで、どのようなことでもお任せいただけます。お気軽にご連絡ください。
弁護士 宮部 明典 Akinori Miyabe
相続問題こんなお手伝いが可能です
相続をしてもらう人の意思を尊重します
紛争を避けるための遺言書の作成。紛争の恐れのある遺産分割協議での代理交渉からの協議書の作成。相続人不存在の場合の対応。遺言執行のお手伝い。
弁護士
加藤 泰
Yasu Kato
遺言・民事信託・遺産分割協議の対応
紛争事例処理の経験を活かして、遺言・民事信託などの生前対策から・相続紛争の対応まで相続のあらゆる場面でみなさまをサポートいたします。
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大野 博満
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