相続コラム はなまる知恵袋
自分で作成した遺言書に法的な効力はある?書き方のポイントを解説
更新日: 2024 . 09.1
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更新日: 2024 . 09.1
遺言書は、被相続人の死亡後遺産をどう扱うかを示したものであり、強い法的効力を持っています。そのため、自分が死亡した際に備えて、あらかじめ自分で遺言書を作成しておきたいという人も、少なくないでしょう。しかし、実際に遺言書に法的な効力を持たせるためには、定められた書式に従って作成する必要があります。
本記事では遺言書の種類や自筆する際のポイント、注意点などを解説します。参考にして、きちんと法的効力を持つ遺言書を作成してください。
弁護士
宮部 明典
[弁護士法人山下江法律事務所]
遺言書とひと口に言いますが、実際の所遺言書には3つの種類があります。具体的には、以下のとおりです。
上記はそれぞれ作成者や取り扱い方が異なります。しかし、いずれも法的効力をきちんと発揮する点は共通です。
自筆証書遺言とは、自分で作成する遺言書のことです。保管場所にも決まりはなく、本人の任意の場所に保管しておけます。
大きなメリットは、好きなタイミングで作成できることと、内容を誰にも知られない状況にできることです。作成に対して他人を一切介さないため、スケジュール合わせや、遺言の内容開示などを避けられます。
ただし、形式不備として遺言書が無効となるリスクが高いのも、自筆証書遺言の特徴です。また、実際に遺言書が使用される際は、改ざんなどを防ぐため家庭裁判所に検認してもらわなければなりません。そのため、相続人の立場からはやや不便と思われる可能性があります。
公正証書遺言とは、公証人に依頼して作成してもらう遺言書です。
専門家が作成するため、形式不備で無効になるリスクがありません。また、正式な内容は公証人が知っているため開封時の改ざんの心配がなく、検認も不要となります。保管場所も公正役場と決まっています。相続人としては探す場所も決まっており、検認不要で内容をすぐ見られるため、便利なタイプの遺言書と言えるでしょう。
ただし、遺言の内容が公証人に知られてしまったり、作成時に時間や金銭面のコストがかかったりなどのデメリットがあります。そのため、被相続人の立場としては、メリットばかりとも言えない形式です。
秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書の存在に対し、公証人から証明を受ける遺言書です。まず自力で遺言書を作成し、封筒に封印して内容がわからない状態にします。そのうえで公証人に「遺言書が存在している」という証明を受け、自分で保管します。
公証人が証明するのは遺言書があることだけです。そのため、内容は知られずに済みます。ただし、自筆証書遺言同様、形式不備のリスクは発生します。また、秘密証書遺言の場合も、家庭裁判所の検認が必要です。
自筆証書遺言に法的効力を持たせるには、定められた書式に従う必要があります。以下の手順を参考にしてください。
どれか一つでも抜けやミスがあると、形式不備として遺言書が認められない可能性があります。必ずすべての指示を守りつつ、作成してください。
まずは、遺言書の本文をすべて手書きで自筆する必要があります。パソコンなどで打ち込んではいけませんし、他の人に代筆させてもいけません。
遺言書における本文の内容とは、どの財産を誰に相続させるのかという指示です。具体的な記載内容は、以下を参考にしてください。
併せて、どのような財産があるのか示すため、財産目録も作成します。財産目録の方は、パソコンで打ち込んだり、資料の添付で済ませることも可能です。ただし、手書きの署名と押印が各ページに必要です。忘れないようにしましょう。
遺言書を作成した日付を、具体的に記載するのも重要です。
例えば「某日」や「大安」などの書き方では、具体的な日付を特定できません。そのため、高確率で形式不備とみなされてしまいます。必ず、年も併せて作成した日付を記載しておきましょう。
また、日付も自筆する必要があります。パソコンの打ち込みなどは許可されていないため、注意してください。
手書きの署名と押印も忘れないようにしましょう。
前述しましたが、本文だけでなく財産目録にも手書きの署名と押印は必要です。目録内容をパソコンなどで記載する場合でも、署名と押印は必須になるため、注意してください。
印鑑は実印でも認印でも構いません。また、遺言書の場合はシャチハタでの押印も認められ、法的効力を発揮します。
遺言書は、加筆・訂正にも決まった方式があるため、従いましょう。
具体的には、訂正箇所に二重線を引き、近くに押印します。さらに余白部分に「4字削除」などと、何文字追記・削除したか書き、手書きで署名して完了です。加筆は吹き出しで文章を挿入します。近くへの押印や余白部分への加入文字数記載、手書きの署名が必要な点は同じです。
実際の所、加筆・訂正は注意すべきポイントが多いうえ、遺言書が見づらくなります。そのため、訂正箇所などが多い場合や、書き方が正しいか自信がない場合は、最初から書き直した方が無難です。
自筆証書遺言を選択する場合は、保管制度を利用するのがおすすめです。保管制度とは遺言書を法務局で管理、保管してもらう制度です。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
遺言書の通知に対しては、被相続人があらかじめ人を指定しておく必要があります。指定がなければ通知は来ないため、注意してください。なお、上限は3人と決められています。
一方で、以下のデメリットもあるため、利用の際は覚えておきましょう。
特に、受け取られたからと言って法的に有効とは限らない点は、よく覚えておいてください。提出時にある程度の間違いは指摘してもらえると前述しましたが、あくまである程度の話です。遺言書の法的効力をきっちりと精査する場ではないため、保管はされたものの法的効力はなかった、というケースもあり得ます。
遺言書が効力を発揮するのは、遺言者(被相続人)が亡くなった後です。よって、相続人は被相続人が死亡するまで、遺産を相続することはできません。
なお、遺言書に有効期限はありません。どんなに古いものであっても、遺言書として効力を発揮します。そのため、遺言書に対し「ない」と思い込み、後から出てきた場合事態が複雑になります。
前述しましたが、遺言書の開封には手続きが必要なケースがあります。以下のいずれかに当てはまる場合です。
上記に該当する場合は、家庭裁判所にて検認して内容を確認しなければなりません。もし勝手に開けてしまった場合、改ざんを疑われたり、5万円以下の罰金などペナルティを受けたりする可能性があります。
遺言書を作成したいと考えており、かつ確実に法的効力を持たせたい場合は、弁護士に相談しましょう。
本記事では自筆証書遺言の作成ポイントを解説しましたが、専門家でない人が独力でミスのない遺言書を作成するのは困難です。苦労して作成したのに、不備があって法的に認められなかったということの無いよう、専門家に依頼した方が無難です。
法的効力のある遺言書を作成したい場合は、専門家に任せるのがもっとも早く、確実な手段です。
はなまる相続では、遺産相続関連のお悩みやトラブルをトータルサポートいたします。遺言書の作成はもちろん、遺言書の内容そのものに対する相談も、ワンストップで受け付けています。遺言書を自分で作成する自信がない方だけでなく、遺言書以外に相続関連の悩みがある方も、ぜひお気軽にご相談ください。
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