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相続で揉めるのはどの家庭にも起こりうること|原因や対処法を解説


更新日: 2024 . 06.10

遺産相続の話し合いにおいて、スムーズかつ穏便に進めたいと感じるのは自然なことです。しかし、遺産相続は多額のお金が動いたり、自宅が遺産の中に含まれたりと、それぞれのライフプランに深く関わる話題です。そのため準備なしで話し合いを始めてしまうと、結果として揉め事に発展するケースは少なくありません。

本記事では遺産相続において、揉める原因や対処法などを解説します。事前に遺産相続に関する知識を得て、できるだけの準備をしておき、揉めない遺産相続を目指しましょう。

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自分と家族が絶対に後悔しない備え方をお伝えします


終活ガイド(上級)/相続アドバイザー(上級)

今井 絵美

[弁護士法人山下江法律事務所]

相続で揉めるのは遺産の金額が5,000万以下のケースで約8割

最高裁判所が発行する「令和4年度司法統計年報(家事編)」では、相続で揉める事例の内、金額が5,000万円以下のケースは約8割です。「相続で揉めるのは遺産の金額が高く、多額のお金が動く場合だ」とイメージする人もいますが、実際は金額が高いから揉める、低いから揉めないと一概に言い切れません。

遺産相続の準備を進めるにあたり、遺産総額と揉めやすさは別の問題と捉えておいた方が良いでしょう。

相続で揉める主な原因7つ

遺産相続で揉めるとひと口に言っても、主要な原因はいくつかに絞られます。具体的には、以下のとおりです。

  1. 相続人同士が疎遠・不仲
  2. 生前贈与や遺言書の内容が不公平
  3. 遺産に不動産が含まれている
  4. 特定の相続人が財産管理をしている
  5. 遺産の大部分が実家の土地や建物である
  6. 被相続人の介護負担が偏っていた
  7. 認知していない相続人の存在が発覚した

遺産の形や相続前の労力、生活スタイルなど何らかの形で「自分が損だ」と感じる人がいると、話し合いは難航しやすくなります。できるだけ平等を意識し、誰かが一方的に我慢することのないよう、配慮するのが重要です。

1. 相続人同士が疎遠・不仲

そもそも相続人同士が疎遠・不仲である場合は、相続で揉めるリスクが高まります

仮に2人の相続人がいたとして、普段疎遠にしていると相手が何をしているか把握できず、お互い「自分だけが被相続人を気にかけている」と考えがちです。その結果、遺産相続の場で自分の方が労力を割いたと主張し合うことになり、揉めてしまいます。

また、不仲な場合は話し合い自体が成立しにくいものです。感情的な言葉をぶつけ合う、連絡を無視する、相手の言い分を聞かないなど、想定されるトラブルは無数にあります。そのためあらかじめ揉めることを想定し、止める人がいる場で話し合いを行うのがおすすめです。

なお、普段仲が良く関係が近いからといって、揉めないわけではありません。例えば、相続人が兄弟で遺産が自宅だった場合、家への思い入れの差から手離すかどうかで意見が食い違うなどのケースもあります。相続人同士の関係性に関わらず、揉め事に発展するリスクはついてくることを覚えておきましょう。

2.生前贈与や遺言書の内容が不公平

生前贈与や遺言書の内容が不公平な場合も、揉める原因になります。

遺言書で指示すると、すべての遺産をたったひとりに相続させ、他の相続人は何も貰えないようにすることも可能です。しかし、何も貰えない相続人が不満に思い、話し合いが荒れるのも自然なことです

この例ほど極端なケースはまれですが、遺産の不平等・不公平が発生すると、揉めるリスクが高まると心得ておきましょう。止むを得ない特別な事情がある場合、結論に至るまでの説明を文書などで記録しておくと、相続人が納得しやすくなるためおすすめです。

3. 遺産に不動産が含まれている

遺産に不動産が含まれていると、揉めるリスクが高まります。不動産はお金の遺産と異なり、以下のような特徴を持つためです。

  • 複数人で分けにくい・分けられない
  • 該当不動産を利用する人としない人で価値が分かれてしまう
  • 維持管理が必要であるため、将来的な労力が偏るリスクがある

お金と異なり物であるため、平等に分けにくいのが主に揉める原因です。また、将来的に利用する人としない人、維持管理する人としない人など、立場や生活スタイルによって抱く価値が異なるのもリスクにつながります。

1つの土地を複数人で分ける場合、実際にすべての条件を平等にして分けられるケースはまれです。多くの場合は分けると利用しにくいほど小さくなってしまったり、道路からの距離や形などから運用のしやすさに差が生じてしまったりして、どこかに不平等が出てしまうのが一般的です。また、相続人の人数によっても状況が変わり、分ける人数が増えれば増えるほど平等にするのは難しくなります。

納得いく結論が出にくい場合は、完全に売却しお金に換えて分けたり(換価分割)、複数の相続人を名義人にしたり(共同名義)といった手段も考慮してみましょう

4. 特定の相続人が財産管理をしている

特定の相続人が財産管理をしている場合も、揉める原因です。財産について詳細を把握しているのが、財産管理をしている人間1人だけになるため、使い込みに関するトラブルが発生しやすくなるのです。

もしも、財産管理を行う相続人が密かに預金を使い込んでいた場合、遺産の総額が減少してしまいます。すると、他の相続人が継ぐはずだった遺産の額も減少してしまい、返金義務の有無を巡って揉めてしまうのです。

一方で、使い込みなどしていないのに「使い込んでいたのでは?」と疑惑が発生し、揉めるケースもあります。財産管理をしていた側としては、労力を割いた挙句に不正を疑われるため、感情的になりやすくなります。一方で他の相続人も、自分で管理していなかったため本当の所がわかりづらく、不正がないと信じ切れません。結果としてお互いに不満や疑惑が募り、ギスギスした空気で話し合う他なくなります。

そのため、できるだけ財産管理は複数人で行う方が良いでしょう。一人で行う場合、財産の状態がわかりやすいようにしておくことも大切です。

5. 遺産の大部分が実家の土地や建物である

遺産の大部分が実家の土地や建物である場合、前述した不動産が含まれているケースと同様、揉める原因となり得ます。

土地が分けにくいことは前述しましたが、物件はそもそも物理的に分けることがほぼ不可能です。また、自宅の場合は賃貸物件などと異なり収入にはならないため、実際に利用するかどうかで大きく価値が異なります。

遺産が自宅、相続人が兄弟であり、兄が自宅住まいで弟が家を出ている場合を考えましょう。兄は遺産(自宅)を普段利用しているため、相続した意義を感じやすくなります。一方、弟は自宅を相続しても、ほとんど生活の役に立ちません。そのため、兄がいくらかお金を多めに渡したり、弟が相続を機に実家に戻ったりなど、話し合いで遺産価値を平等にする方法を探さなければなりません。

自宅の場合は売って換金しようにも、思い入れがあったり住みたい人がいたりなどの理由から、難しいケースがあります。加えて預金などお金での遺産が少ない場合、お金で平等のバランスを取るのも難しくなってしまうため、話し合いの長期化を想定して早めに相談を開始しておくのがおすすめです

6. 被相続人の介護負担が偏っていた

被相続人の介護負担が偏っていた場合、遺産の寄与分の発生を機に揉めるケースがあります。寄与分とは民法に定められた制度です。被相続人に対して無償の事業手伝いや、継続的な介護などの寄与を行った相続人に寄与分を認め、通常の水準よりも多めの遺産を相続する権利が与えられます。

寄与分が生じると他の相続人の遺産はいくらか減少してしまうため、寄与分を認めるかどうか、認めるとして具体的にいくら認めるかで揉めてしまうのです。また、介護負担の偏りについてもさまざまな条件が絡むため、話し合いが進みにくい傾向にあります。

介護負担の偏りは、実際に行った人とそうでない人で認識の差が出やすく、丸く納まりにくいケースと言えます。そのため、できるだけ介護負担を平等にしましょう。平等にできない場合は、遺産相続の際、介護負担の不平等を考慮に入れるのも大切です。

7. 認知していない相続人の存在が発覚した

遺産相続を機に親族を確認した結果、今まで認知していなかった相続人の存在が発覚した場合、揉める事態に繋がりやすいです。

シンプルに相続人の数が増えてしまうと、一人当たりの取り分が減少してしまうため、歓迎されにくい状況です。また、お互い存在を知らないほど疎遠であるため、生活状況や被相続人との関わり方などがわからず、相手の方が得しているように見えやすくなります。また、連絡が取れず話し合いが進められないケースも見受けられます。

可能であれば被相続人が存命のあいだに法定相続人を洗い出し、認知できていない相続人がいないか確認しておくのがおすすめです。

相続で揉めるのを防ぐには遺言書の作成が有効

相続で揉めるのを防ぐには、遺言書の作成が有効です。遺言書とは遺産の指示書のようなものであり、誰に何をどれくらい相続させるのか、被相続人が決めた内容がしたためられています。

一般的に遺産相続において、遺言書は最も強い法的効力を持っています。相続人に不満があったとしても、遺言書の内容は原則くつがえせません。すると、話し合いがそもそも発生しないため、揉めることもありません。

なお、遺言書には以下の3つがあります。

  • 自筆証書遺言:被相続人が自ら記載し保管する
  • 公正証書遺言:被相続人の指示した内容を公証人が取りまとめ保管する
  • 秘密証書遺言:被相続人が自ら記載し保管するが、公証人の証明も受けておく

自筆と秘密の遺言書は、形式不備から法的に無効となってしまうケースがあります。そのため、できるだけ公正証書遺言で作成しておくのがおすすめです。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:その遺言書、法的効力がありますか?無効な遺言書にしないために気を付けること

スムーズに相続を済ませるためには弁護士に相談するのもおすすめ

遺産相続をスムーズに済ませるためには、弁護士に相談するのもおすすめです

弁護士には遺言書の作成や記載内容の相談などを依頼できるため、手早い相続の準備が可能です。また、実際に揉めてしまった後でも、法律に基づき妥当な落とし所を探すサポートをしてくれます。

遺産相続は必要な手続きも多く、中には締め切りが設定されているものもあります。揉めてしまい話の結論が出なかったり、自分の手に負えないと感じたりした場合は、法律のプロである弁護士への相談を検討してください。

相続に関する家族内のトラブルは専門家に相談を

相続に関する家族内のトラブルは、専門家に相談をしてください。

「家族だから話し合えば大丈夫」と考える人もいますが、家族だから揉めない、仲が良いからスムーズに済むとは限らないのが遺産相続です。トラブルを避ける準備も大切ですが、揉めてしまった場合の対応も考えておきましょう。

はなまる相続では、弁護士を含む相続関連の専門家が相談に応じます。相続で揉めた際の相談をはじめ、各種事務手続きや相続税などの計算など、相続に関わる悩みであればワンストップで対応可能です。相続関連のお悩みがある際は、ぜひお気軽にご連絡ください。


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