1. HOME
  2. 相続コラム はなまる知恵袋
  3. 親の終活|親の想いと財産を円満に引き継ぐ「親活(おやかつ)」とは

相続コラム はなまる知恵袋

親の終活|親の想いと財産を円満に引き継ぐ「親活(おやかつ)」とは


更新日: 2025 . 03.1

日本の平均寿命は女性87歳・男性81歳ですが、自立して生活できる年齢を指す「健康」寿命は女性74歳・男性72歳です。つまり親を約10年支える覚悟が必要です。

「まだまだ先のこと」と思っていたら突然親の介護が始まり、弱気になっていく親とは終活・相続の話ができなかった・・・という方も少なくありません。親子の最期の10年には、さまざまな「後悔」リスクが潜んでいるのです。

自分の人生も大切にしながら親の介護に向き合う備え、親を幸せに見送る備え、親の想いと財産を円満に引き継ぐ備え、これらを私は「親活(おやかつ)」と呼んでいます。本記事ではそんな「親活」こと、親の終活についてを解説します。

担 当
今井絵美のプロフィール写真

自分と家族が絶対に後悔しない備え方をお伝えします


終活ガイド(上級)/相続アドバイザー(上級)

今井 絵美

[弁護士法人山下江法律事務所]

親の終活を一緒にしておくべき理由

親の終活を一緒にしておくべき理由は、いくつか挙げることができます。代表的なものは、次の4つです。

  • 遺品整理の手間が少なくなる
  • 親の財産がわかる
  • 親の意思を反映できる
  • 力仕事などを一緒にできる

上記のこともとても大事なことです。しかし、親活で最も大切なことは、「親子で話をすること」なのです。

 

突然ですが「親との会話に残された時間」を把握していますか

例えば遠方に住む75歳の母がいるとしましょう。年末年始、GW、お盆、SW・・・じっくり親子で話す時間がそれぞれ1時間として年間4時間、平均寿命まで生きると仮定すると、4時間×12年間=48時間(あと2日!)。認知症になるとさらにその時間は短くなります。想像以上に親子で会話できる時間は短いものです。

親と終活・相続の話をしたいと思っても、認知症や病気などで話ができないなんて事態も珍しくありません。だからこそ、親活として一緒に終活をすべきなのです

親の終活における3つの極意

親が終活・相続の話をしたがらない本当の理由、そこには3つのタブーがあります。

具体的には①「お金の話は人前でするな」②「親の財産をアテにするな」③「縁起でもないことを言うな」という親の本音です。これらのタブーを乗り越える3つの極意を解説します。

①死後ではなく“生きる時間”にフォーカスすべし

いきなり「預金がいくらあるん?」と聞くと「金」のタブーが発動します。

「介護が必要になったらどこで過ごしたい?延命治療はどうして欲しい?」など、お金の話からではなくあくまで親の老後や終末期のことを「一緒に考えたい」という気持ちをまず伝えましょう。

②“負の遺産”から話題にすべし

預貯金や不動産、年金などプラスの財産の話から入ると「欲」のタブーが発動します。

ローンや連帯保証人、空家、山林、境界があいまいな土地、亡くなった先祖名義のままの不動産など“負”の遺産を話題にしましょう。そうすることで「欲」とは関係なく、リスクに備える当事者同士として相続の話ができます。

③親より先に自分がやるべし

子のあなたが先に死に向き合った上で親に切り出すことで、「死」のタブーを乗り越えましょう。具体的には、あなた自身が「エンディングノート」を完成させ、その経験から親にも勧めてみる方法があります。

自分が書くことで「何を親に聴いておくべきか」というポイントが分かります。実際、終活に年齢は関係ありません。あなた自身の「もしも」のとき、そのノートで家族を救うことができます。

具体的な親の終活でやること

ここまで、親の終活の極意について説明してきましたが、具体的に何をしたらいいのでしょうか。代表的なものは、以下のとおりです。

  • エンディングノートを書いてもらう
  • 財産管理をしておく
  • 物品の整理を一緒にする
  • 介護や医療の希望を聞いておく
  • お墓の希望を聞いておく
  • デジタルデータの整理を一緒にする

極意に通じる話もありますが、改めて何がどうして大事なのかを理解しておいてください。

エンディングノートを書いてもらう

エンディングノートは、親の終活において大切な役割を果たします。医療や介護の希望、財産管理や葬儀の予定などを記録することで、家族の負担を軽減しつつ親の意思を尊重できるでしょう。

作成する際は、まずは思い出や好きなことなど書きやすい項目から始めるとスムーズに進められます。市販のエンディングノートや無料のテンプレートを活用すると、必要な情報が整理しやすくなります。

親の想いを形に残し、家族が安心できる未来を作るために、自らも作成しながら少しずつ進めていきましょう。

財産管理をしておく

財産を事前に整理しておくことも、非常に重要です。 預貯金や不動産、保険・株式などの資産を正しく把握すれば、相続手続きがスムーズに進むでしょう

財産管理を進める際は、まず親と一緒に資産の一覧表を作成し、どこに何があるかを明確にします。その際、銀行口座や証券口座、保険など証券の書類を整理し、エンディングノートやメモに記録しておくと安心です。

また、遺言書作成や家族信託の活用も検討すると、相続時のトラブルを防ぐことができます。 財産の分配については親の意思を確認し、必要に応じて専門家に相談することも大切です。 

物品の整理を一緒にする

アルバムや家具など、物品の整理を一緒に進めることも大切です。長年暮らした家には、思い出の品や不要になった物がたくさん残っている場合もあるでしょう。親が元気なうちに整理しておけば、将来的な片付けで迷うこともなくなります。

まずは、親の気持ちに寄り添いながら「思い出の品」や「必要な物」、「処分する物」に分類していきましょう。特に貴重品や重要な書類は、使いやすい場所にまとめ、家族での管理方法を確認しておくと安心です。

無理に急がず、少しずつ進めれば、親も納得しながらスムーズに整理できます。

介護や医療の希望を聞いておく

親の終活を進める過程で、介護や医療の希望を事前に聞いておくのも非常に重要です。将来的にどのような介護を受けたいのか、延命治療を希望するのかなどを確認しておくと、家族が迷わずに適切な判断を下せます。

質問する場合はリラックスした雰囲気で、「もしものとき、どんな医療介護や受けたか考えたことはある?」と自然に話し出すと良いでしょう。希望する施設や在宅介護の覚悟、持病の治療方針なども聞いて安心です。

エンディングノートや書面に記録しておくと、いざというときに家族が一緒に対応できます。

お墓の希望を聞いておく

お墓の希望を事前に確認しておきましょう。お墓の種類や埋葬方法は多様化しているため、親の意思を尊重しつつ、家族にとっても負担の少ない選択をする必要があります。

「お墓はどうしたい?」と自然に話切り出し、先祖代々の墓に入るのか、新たに墓を建てるのかなどを聞いてみましょう。親が元気なうちに具体的な希望を聞いて、必要に応じて墓地の契約や手続きを進めれば、家族全員が納得できる形で準備を進められます。

デジタルデータの整理を一緒にする

近年、終活においてデジタルデータの整理が重要になっています。親がスマートフォンやパソコンを持っている場合、写真や動画、メールやSNSアカウントなどのデータが相続時の問題となることがあります。死後、家族がアクセスできずに困ることもあるようです。

親がどのサービスを利用しているのか一緒に確認し、必要なデータやアカウントの情報を整理しましょう。IDやパスワードをメモに記録したり、家族がアクセスできる重要な方法を決めたりすると安心です。

また、不要なデータや使っていないサービスを整理・解約することをおすすめします。親と一緒に無理なく進め、スムーズにデジタル終了を進めましょう

まとめ

親の終活では、生前に言いにくいことでも話題にし、自分自身が率先して親に関わる親活が重要です。親に残された時間は予想よりも短いので、そのあたりを踏まえつつ、タブーに触れないように終活を促すようにしましょう。

とはいえ、終活については専門家でなければ、具体的な対処法や対策がわからないこともあります。親が終活に前向きになった段階で、専門家を交えた相続の相談をしておくと良いかもしれません。

 


相続コラムを検索する

© 2025 一般社団法人はなまる相続