相続コラム はなまる知恵袋
不動産の相続コラム「負動産①」
更新日: 2020 . 08.23
相続コラム はなまる知恵袋
更新日: 2020 . 08.23
不動産コンサルタント(相続対策専門士)/宅地建物取引士
津田 真実
[株式会社リアルブレーン]
“負動産”という造語が多く使われるようになりました。
利益を生むどころか損失を生む不動産のこと、通常の不動産よりも流通性が劣り、換金することが困難な不動産のことを指します。
つまり、売ろうにも売れない、貸そうにも貸せない、固定資産税や草刈りなどコストばかり払い続ける不動産のことです。
私は、不動産で悩める方、主として地主さん、アパートなどの賃貸不動産オーナーといった方向けに、その問題解決型パートナーとして、常に何ができるかを一緒に追求し続けてきました。
今回は“負動産”のなかでも利益を生むどころか損失を生む不動産について考えていきます。
よく、相談の場で聞くお話しがあります。
「相続の税金対策で建てるのだから、敷地に最大限の建物を建てたらよい・・・。と言われ建てた。」また、
「ローンの支払い後には、あなたの財産になり、家賃収入は安定した収入になる。毎年のキャッシュフローはマイナスでも大丈夫・・・。と言われて建てた。」といったようなお話です。
なかには「相続税対策だから土地さえ守れれば儲からなくてもいい。」と割り切ってらっしゃる方もいらっしゃいます。
はたしてそれでよいのでしょうか?
投資的観点からみるととても無謀なお話です。
賃貸アパートを建築するということは節税対策であろうがなんであろうが、そこに土地や資金を注ぎ込む以上は“投資”なのです。
“投資”という言葉に対してまだまだ誤解もあるようです。
言葉を口にする自体がどこか卑しく、不労所得を得るということは恥ずかしい事のように思われている方も少なくありません。
しかしながら今の世の中はどうでしょう。
公的年金をはじめとする社会保障制度が徐々にほころびを見せ始め、未来が厳しいのはご承知のとおりです。
また、豊かなイメージの日本と違い、諸外国から比較すると、その豊かさも失いつつあるようです。そこで自助努力で乗り切ろうと貯蓄から投資へと掲げた資産形成の流れは国が挙げたプロジェクトです。
その“投資”の世界では、必ずどこかで手仕舞いしなければなりません。
株式や投資信託にみられるように、証券を購入し保有中は定期的に配当金を得られ、購入時より値上がり時に売却すると値上がり分を利益として得られます。
今、含み益がいくらか?含み損がいくらか?というのは皆さんも関心が高いところですよね。投資である以上は儲からないと意味がありません。
ところが、不動産投資については今売ったらいくらか?5年後、10年後はどのような価値の予測が立つのか?
意外なことに、ほとんどのケースで物件の価値の分析、検証がなされておらず、目の前の節税には効果があったかもしれないが、家賃収益の積算と物件価値のトータルで勘案すると、結果、儲かるどころかマイナスになっているケースが多いのです。
驚くことに、私どもが調査分析してみると、その半分以上はやらないほうが良かった土地活用を目の当たりにします。
オーナーの多くが成功したか成功していないか検証できないまま相続が発生してしまっているのです。
ここで考えていただきたい。
アパートは賃借人に貸した瞬間、賃料徴収権という権利に変わります。つまり、オーナーが自由にその不動産を使用できなくなるのと引き換えに、そこから貰い受ける家賃の収益によって物件の価値が決まってくるということです。
例えば、地主さんのケースで説明すると、時価1億円の土地上に1億円の建築費をかけてアパートを建てたとした場合、合計2億の投資をしたことになりますが、市場では2億円の価値で取り扱いません。
その不動産からいくらの賃料収入が見込めるか?その不動産が数年後いくらに値上がりすると予測できるのか?という期待によって物件価格が決まりますので、下記のイメージになります。
(イメージ:年収800万円 市場の期待利回り7%⇒市場価格 約1億1、400万円)
なんと、この例でいうと資産が8、600万円も目減りしたことになります。
よく、相続税対策でアパートを建てれば資産が圧縮できて節税に繋がるとのセールストークを聞きますが、節税額以上に資産価値が目減りすると、本末転倒になることを忘れてはいけません。
継続して安定した家賃収入が見込められれば、その差額も埋められますが、不動産賃貸事業の成功の鍵は一にも二にも三にも立地であり、条件から外れるとなると挽回するに容易ではないでしょう。
人口減少や空き家増加で、いうまでもなく市場の先細りは避けられない状況です。
ニーズの乏しい立地に家賃保証を武器に収益性を軽視したアパートを造り続ける・・・といった無謀な現状にもようやくブレーキがかかりはじめました。
現に有名な俳優を使ったテレビコマーシャルでおなじみの一部のアパートメーカーによる自己の利益追求のための建築違反や、金融機関の不正融資などにみられる不動産投資への歪みが露呈したのです。
それでもアパートメーカーは建築するメリットばかり強調し、お客様から受注意欲を削ぐような都合の悪い情報は与えてくれません。彼らは建ててもらってなんぼです。
厳しいノルマの中、営業を繰り広げなければなりません。
相続対策を銘打った商品の売り込みにすぎないのです。時には税理士と銀行マンとタッグを組んで提案してくることもあるでしょう。
賃貸経営に関して情報に乏しいお客様にとって冷静な判断がはたしてできるものでしょうか。
実は人生の中で最も大きな資産が動く時にあるにもかかわらず、多くの地主さんがよく理解しないまま決断実行してしまっているのが相続対策の実態なのです。
その大概のケースで節税目的が仇となっています。
これからアパート建築を検討される方は、毎年の事業収支はもちろんのこと、その不動産をもし売却するとなるといくらになるのか?将来の売却予測でいうといくらか?というように“価値”に敏感になることです。
そこで建ててよいのか?建てて良いのであればどの程度のものなのか?リスクの許容範囲かどうか?
一方、既に建てられたアパートを所有している場合においても今からでも遅くありません。
一度リセットして資産状況を分析されることを、ぜひお勧めします。というか必ずやってください。
きっとお客様の事情に合った課題と対策が見えてくるはずです。なにもアパートを建てることが相続対策のゴールではありません。
調査結果、採算ベースに乗ったので、そのままアパート建計画を実行支援した例。
建てるのを止め、既に所有しているアパートを生前に贈与して次世代に移した例。
また、賃貸事業として拡大させるため個人所有から法人化した例。
思い切って所有不動産を一部売却して資産価値が目減りしにくい不動産に組み替えた例。
あえて何もしないという選択をした例。
また、アパートマンションを建てずとも何千万単位で相続税の節税に導いた例もあります。
本来、ご先祖様が代々大切にされてきた資産(不動産)を活用して、ご家族皆様がどんどん豊かになるべきであり、そうならなければならないと考えます。
豊かになることは決して卑しく恥ずかしいことではありません。
投資の観点も取り入れながら、不動産相続の対策を私たちとご一緒に考えてみてはいかがでしょうか。残されるご家族がツケを回され決して困られることがないように。
不動産コンサルタント
津田 真実
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