1. HOME
  2. 相続コラム はなまる知恵袋
  3. 自筆証書遺言の正しい書き方|有効にするためのポイントを押さえよう

相続コラム はなまる知恵袋

自筆証書遺言の正しい書き方|有効にするためのポイントを押さえよう


更新日: 2025 . 03.1

自筆証書遺言は、作成方法を誤ると無効になってしまう可能性があります。自分で作成できる手軽さは魅力ですが、正しい書き方の理解が必要です。

本記事では、自筆証書遺言の解説から、有効な遺言書を作成するためのポイントまで、わかりやすく解説していきます。せっかく作った遺言書を無効にしないため、ぜひ参考にしてください。

担 当
宮部 明典のプロフィール写真

紛争事案だけでなく、紛争予防のためのアドバイスも行います


弁護士

宮部 明典

[弁護士法人山下江法律事務所]

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の本文をすべて自身の手で書き記し、日付を入れ、署名・押印して作成する遺言書です。自宅で作成でき、作成費用もかからない方法となっています。

一方、公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言書です。公証人の面前で遺言者が口頭で遺言内容を述べ、それを公証人が記録します。作成時には証人2名以上の立ち会いが必要かつ手数料がかかりますが、法的な安全性が高いという特徴があります。

【自筆証書遺言と公正証書遺言の比較表】

自筆証書遺言は自宅で保管をしていると、相続開始時に発見されない、改ざん・隠ぺいなどの恐れがあります。

しかし、2020年(令和2年)から法務局で保管できる制度が開始され、デメリットとなる紛失や改ざんのリスクの部分が解消されやすくなりました

自筆証書遺言は要件を満たして初めて有効になる

自筆証書遺言を法的に有効とするためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。主な要件は、次のとおりです。

  • 全文を自筆で書く
  • 署名する
  • 作成した年月日を明記する
  • 押印する
  • 訂正ルールを守る

これらの要件について、詳しく解説します。

全文を自筆で書く

自筆証書遺言の最も重要な要件は、遺言書の本文をすべて自分の手で書くことです。パソコンでの作成や、他人による代筆は認められません。

自筆での作成が求められる理由は、遺言者本人の意思を確実に反映させ、偽造や変造を防ぐためです。文字の大きさや筆記具の種類に制限はありません。

財産目録に限っては例外が認められており、パソコンでの作成や通帳コピーの添付が可能です。ただし、添付した書類には必ず遺言者本人の署名と押印が必要となります。

署名する

自筆証書遺言には、遺言者本人の自筆での署名が必要です。氏名はフルネームで記載し、旧姓や通称名は避けて戸籍上の氏名を使用しましょう。

署名がない場合や、他人が代筆した場合は遺言書全体が無効となってしまいます。

作成した年月日を明記する

遺言書には、作成した日付を必ず記入しなければなりません。年月日は省略せずに、西暦や元号で年を明記し、月日も具体的な数字で記載します。「○月吉日」といった曖昧な表現は認められません。

日付の記載は、複数の遺言書が存在する場合の有効性を判断する重要な基準となります。新しい日付の遺言書が優先されるため、正確な記載が必要です。

押印する

署名に加えて、自筆証書遺言には押印が必要です。印鑑の種類は特に指定されていませんが、遺言書の重要性を考慮すると実印を使用すると良いでしょう。実印を使用することで、遺言書の信頼性と正当性が、より高まります。

押印は署名の横に行い、印影が明瞭に残るように注意が必要です。かすれや二重押しは避け、はっきりと押印しましょう

訂正ルールを守る

遺言書の内容を訂正する場合は、法律で定められた方法に従う必要があります。誤った箇所は二重線で消し「吹き出し」を使用して正しい文言を書き加えます。

さらに、余白へ「3文字削除、5文字加筆」などと訂正した内容を明記し、署名と押印を忘れずに行います。

修正テープや塗りつぶしによる訂正は認められません。また、訂正箇所への署名押印を忘れると、その部分だけでなく遺言書全体が無効となります。

自筆証書遺言を書く際のポイント3つ

自筆証書遺言を作成する際には、以下の3つのポイントを押さえましょう。

  • 財産を把握するための書類を集める
  • 誰に何を相続させるか明記する
  • 遺言執行者を指定する

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

財産を把握するための書類を集める

自筆証書遺言を作成する前に、まずは自身の財産の正確な把握から始めます。預貯金、不動産、有価証券など、すべての財産を漏れなく確認しましょう。

確認が必要になる主な書類は、次のとおりです。

  • 不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 預貯金通帳や取引明細書
  • 証券会社の取引残高証明書
  • 生命保険証書
  • ゴルフ会員権などの会員権証書
  • 美術品や骨董品の評価証明書

これらの書類を確実に集めることで、正確な財産目録の作成が可能です。相続人のあいだでのトラブルを防ぐことにも繋がります。

誰に何を相続させるか明記する

遺言書では、誰にどの財産を相続させるのか、具体的に記載することが重要なポイントです。「残りの財産は長男に」といった曖昧な表現は避け、個々の財産について内容と受取人を明確に指定しましょう。

例えば、以下のように具体的に記載します。

  • ○○銀行△△支店 普通預金 口座番号××××の預金全額を長男Aに相続させる
  • ××県○○市△△町1-2-3所在の土地(地番4567番地)を次男Bに相続させる

財産目録は自筆ではなく、パソコンでの作成が可能です。ただし、パソコンで作成した場合は、すべてのページに署名と押印を忘れずに行う必要があります

遺言執行者を指定する

遺言執行者は、基本的に誰でもなれます。しかし、遺言書の内容を確実に実行するためには、信頼できる遺言執行者を指定しましょう

遺言執行者は、相続人への通知義務や遺言の内容に従って相続財産を相続人に引き渡す重要な役割を担うためです。

相続案件の場合、法律・税務の専門家を遺言執行者に指定することで、スムーズな相続手続きに期待できるでしょう。

自筆証書遺言を書く際の注意点5つ

自筆証書遺言の作成にあたり、注意したいポイントは次の5つです。

  • 共同遺言は無効になる
  • ビデオレターは遺言書としては無効になる
  • 曖昧な表現を避ける
  • 遺留分侵害を避ける
  • 相続開始までに財産がなくなった場合は部分的に無効になる

これらの注意ポイントを理解し、自筆証書遺言が無効になってしまわないようにしましょう。

共同遺言は無効になる

夫婦や親子であっても、複数人で1通の遺言書を作成することはできません。これを「共同遺言の禁止」といい、遺言者一人ひとりの意思を明確にして後々のトラブルを防ぐため、民法975条で定められています。

例えば、夫婦で一緒に「私たち夫婦は以下のように遺言します」と書いた遺言書や、兄弟で共同作成した遺言書、親子で連名にて作成した遺言書は、すべて無効です。それぞれが個別に、自分の遺言書を作成しましょう。

ビデオレターは遺言書としては無効になる

遺言書は、必ず書面で作成する必要があります。詳細な内容を録画や録音で残していたとしても、ビデオレターや音声録音だけでは法的な効力を持ちません

ビデオレターなどは正式な遺言書にはなりませんが、以下のような内容を伝えるには有効な手段です。

  • 遺言者の思いや意図を視覚的に伝えられる
  • 財産分割の理由を具体的に説明できる
  • 相続人への感謝やメッセージを残せる

相続人間の理解を深め、トラブルを防ぐ効果も期待できます。そのため、書面の遺言書と併せてビデオレターを残すことで、より充実した相続準備が可能になるでしょう。

曖昧な表現を避ける

遺言書の解釈をめぐるトラブルを防ぐために、明確な表現の使用が重要です。特に財産の取得に関する表現は、誤解を生まないよう慎重に選ぶ必要があります。

【避けるべき表現例】

  • 財産を任せる
  • ○○に託す
  • △△に渡す
  • ××に譲る

【明確な表現例】

  • 相続させる
  • 取得させる
  • 遺贈する

誤解を生まない、法的な効力が明確な表現を使用することで、相続人間での解釈の違いによるトラブルを防げるようにしましょう。

遺留分侵害を避ける

遺留分侵害とは、遺言書の内容が相続人に法律で保障された最低限の相続分(遺留分)を下回ってしまうことです。

「すべての財産を長男に相続させる」など、特定の相続人にのみ財産を相続させる遺言は、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。相続人同士のトラブルになりかねません。

配偶者や子供など、一定の相続人には法律で一定の遺留分が保障されているため、遺言書作成時には遺留分を考慮した財産配分をしましょう

相続開始までに財産がなくなった場合は部分的に無効になる

遺言書を作成してから相続が開始されるまでのあいだに、記載していた財産が失われてしまうケースがあります。例えば、預貯金を使い切ってしまったり、不動産を売却したりといった場合です。

財産がなくなった場合は、該当する財産に関する部分の遺言のみが無効となり、他の財産に関する遺言の効力は維持されます。

部分的に遺言が無効になり、遺留分侵害などのリスクを避けるためには、定期的な財産状況の確認と遺言書の見直しが欠かせません。

自筆証書遺言の作成で迷ったらはなまる相続に相談を

自筆証書遺言の作成には、さまざまな法的要件や作成時の注意点があります。要件を満たさない遺言書は無効となる可能性があり、相続トラブルの原因にもなりかねません。

はなまる相続では、弁護士や税理士・司法書士など、相続の専門家がワンストップで対応いたします。遺言書作成のアドバイスから相続に関するさまざまな相談まで、経験豊富な専門家が丁寧にサポートいたします。

まずは無料相談から、お気軽にご相談ください。相続に関する不安や疑問にお答えし、最適な解決策をご提案いたします。

宮部 明典のプロフィール写真

弁護士

宮部 明典

Akinori Miyabe

相続問題こんなお手伝いが可能です

  • 遺産分割協議のための交渉、裁判手続き
  • 相続する人がいない相続財産の管理、清算
  • 遺言者の意思を尊重した遺言執行

相続をしてもらう人の意思を尊重します

紛争を避けるための遺言書の作成。紛争の恐れのある遺産分割協議での代理交渉からの協議書の作成。相続人不存在の場合の対応。遺言執行のお手伝い。

加藤泰のプロフィール写真

弁護士

加藤 泰

Yasu Kato

遺言・民事信託・遺産分割協議の対応

紛争事例処理の経験を活かして、遺言・民事信託などの生前対策から・相続紛争の対応まで相続のあらゆる場面でみなさまをサポートいたします。


大野博満のプロフィール写真

相続アドバイザー

大野 博満

Hiromitsu Ono

相続手続き丸ごとサポート

はなまる相続のメンバーと連携し、相続人確定や財産調査、しなければならない手続きの洗い出しから預貯金等の現金化など、相続のお手続きをサポートいたします。


相続コラムを検索する

© 2025 一般社団法人はなまる相続