相続コラム はなまる知恵袋
相続対策でスムーズな相続を|節税のポイントも押さえよう
更新日: 2024 . 07.31
相続コラム はなまる知恵袋
更新日: 2024 . 07.31
相続は誰にでも訪れる人生の大きなイベントです。しかし、対策を怠ると残された家族に大きな負担がのしかかりかねません。相続トラブルを未然に防ぎスムーズに相続を進めるためには、生前から適切な相続対策を行うことが重要です。
本記事では、相続対策の必要性や具体的な方法について解説します。相続対策をすることでスムーズな相続や節税を実現させたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
終活ガイド(上級)/相続アドバイザー(上級)
今井 絵美
[弁護士法人山下江法律事務所]
相続対策が必要なのは「多くの遺産を保有している方」というイメージを持たれている方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、一般家庭こそ相続対策が必要であると言えます。
最高裁判所から出されている令和5年(2023年)の司法統計年報では、遺産分割で裁判所に持ち込まれた事案の総数7,234件のうち、1,000万円以下が2,448件・5,000万円以下が3,166件と発表されました。
約8割の事案が、5,000万円以下の遺産分割で発生しています。このことから、多額の遺産を持つ富裕層だけでなく、一般家庭においても相続対策が欠かせないことは明らかです。
相続トラブルが起こる主な原因には、相続人の数が多い・遺産分割の方法をめぐって意見が対立する・納税のための金銭が用意できないといったことが挙げられます。
事前に相続に関するやりとりを親族間などでできていない・納税に関する準備が行われていないと、いざとなったときトラブルに発展しかねません。円滑な相続の実現には、適切な相続対策が不可欠です。
相続対策を行う際に大切なポイントは、主に以下の3つです。
これらの対策について、具体的な対策方法も交えて解説します。
争族対策とは、相続に関する家族間のトラブルを防ぐために行う対策です。争族対策の具体的な方法としては、以下が挙げられます。
これらについて、詳しく見ていきましょう。
遺言書は、相続人のあいだでのトラブルを防ぐために有効な手段です。遺言書を作成し各財産の相続人を指定しておくことで、遺産分割協議の必要がなくなるためです。
遺言書の種類は、以下の3つに分けられます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、内容をよく理解したうえで遺言書の種類選び・作成を行いましょう。
相続人が被相続人の財産をすべて把握するのは、容易ではありません。そこで、生前から相続財産の一覧表を作成しておくことがおすすめです。
不動産や預貯金・有価証券・保険などすべての財産を漏れなくリストアップし、財産の所在地や数量・価値などを詳細に記録しましょう。債務についても併せて記載することが重要です。
相続財産の一覧表があれば、遺産分割協議がスムーズに進むだけでなく、相続税の申告漏れも防げます。
生前に遺産相続についての話し合いを行えると良いでしょう。被相続人が元気なうちに遺産相続について家族で話し合っておくことは、争族対策として非常に重要です。被相続人の意思を確認しつつ相続人同士の意見を調整することで、相続トラブルを未然に防げるためです。
話し合いの際は、遺産分割の方法や実家の扱い・介護費用の負担など、具体的な内容に踏み込んで議論することが大切です。後のトラブルを避けるためにも、話し合いの内容はメモなどに残す、または必要に応じて、専門家に同席してもらうのも有効です。
相続税は、相続財産の価値に応じて課税されます。節税対策を行うことで、相続税の負担軽減を期待できます。
主な節税対策として挙げられるのは、以下のとおりです。
これらについて、詳しく見ていきましょう。
生前贈与は、被相続人が存命中に財産を相続人に贈与することを指します。相続税対策として有効な手段の一つです。
特に「暦年課税制度」を利用すると、1月1日から12月31日までの1年間で110万円までの贈与は非課税になります。計画的に贈与を行うことで大幅な税負担の軽減を実現できるでしょう。
さらに、住宅を購入するなどといった資金の贈与は「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」という特例措置の適用により、非課税枠が最大3,000万円まで拡大します。住宅取得等資金の贈与特例を活用すれば、子供の住宅購入を支援しつつ、相続税対策にもつなげられるでしょう。
非課税の限度額を超えない範囲で生命保険を契約することで、相続税の節税対策として活用できます。
被相続人が死亡した際に支払われる生命保険金や損害保険金は相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。しかし、契約者と被保険者が同一で保険金受取人が相続人の場合、500万円×法定相続人数までは非課税の対象です。詳細は、国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」で公表されています。
例えば、法定相続人が3人いる場合は、1,500万円までは保険金に相続税がかかりません。非課税枠を有効に活用することで、相続税の負担を抑えることが可能です。
保険料の支払いは長期にわたるため、無理のない範囲で契約できると良いでしょう。生命保険は万が一の際の資金準備にもなるため、相続対策だけでなく生活保障の面でもメリットもある節税方法です。
更地や空き家を賃貸として活用することで、節税の効果が期待できます。賃貸アパートやマンションは「入居者がいることで自由に使えない分」が反映され、評価額が減額になります。さらに、自分が所有する土地に賃貸用の建物を建て、第三者に貸している場合の土地は「貸家建付地」と呼ばれ、建物とともに評価額の減額が可能です。
相続した不動産や土地の賃貸活用は節税効果に期待できる一方、入居者がいなければコストがかさんで赤字になるリスクがあります。また、賃貸収入によって預貯金が増加すれば、相続財産が多くなってしまう点にも注意が必要です。
不動産を賃貸として活用する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、慎重に検討することが大切です。
被相続人と相続人の同居は、相続税の節税につなげられます。同居していた場合「小規模住宅等の特例」が適用されるためです。
被相続人の自宅の敷地について一定の要件を満たす場合、相続税の課税対象となる330㎡までの土地について、評価額を最大80%減額できます。同居していた親族が特例を使用するための要件は、以下のとおりです。
(参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)
特例の適用条件を満たすためには生前からの準備が欠かせませんが、同居による相続税の節税は、比較的取り組みやすい節税対策だといえるでしょう。
相続税の申告と納付は、相続発生日の翌日から10か月以内に完了させる必要があります。原則として現金納付となるため、納税資金の準備が欠かせません。
期限内に納税が行えないと、延滞税や加算税が課されるリスクがあります。そのことから、相続の全体像を早期に把握し、計画的に納税対策を進めることが大切です。
特に、相続財産の大部分が不動産である場合、納税のための資金確保に苦慮する可能性が考えられます。相続発生後に慌てて不動産を売却すると買い叩かれるリスクもあり、せっかくの財産を無駄にしてしまいかねません。
本記事内でご紹介したとおり、生命保険を活用し、相続税の納税資金を確保する方法などで納税対策を行うこと検討がおすすめです。
被相続人が元気なうちから相続人と協力して納税対策を講じておくことで、残された家族の負担を軽減できます。
相続税の申告と納付は、専門的な知識が必要とされます。税理士など専門家の助言を得ながら、万全の準備を整えると良いでしょう。
相続対策は、専門的な知識が必要とされる分野です。自分だけで対策を進めるのが不安な場合には、専門家に相談するのが得策といえます。税理士や司法書士、行政書士など、相続に強い専門家を選ぶことが大切です。
一般社団法人はなまる相続には、相続対策のプロフェッショナルが揃っています。豊富な知識と経験を持つ専門家によって、お客様に最適な相続対策をご提案いたします。相続対策は、早めに取り組むことが重要です。本記事を参考に、生前からしっかりと対策を講じ、スムーズな相続を実現しましょう。相続対策でのお困りごとは、ぜひはなまる相続までお気軽にご相談ください。
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