相続コラム はなまる知恵袋
負動産とは?相続時のリスクと損をしないための対策を解説
更新日: 2024 . 09.28
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更新日: 2024 . 09.28
“負動産”という造語が多く使われるようになりました。利益を生むどころか損失を生む不動産のこと、通常の不動産よりも流通性が劣り、換金することが困難な不動産のことを指します。つまり、売ろうにも売れない、貸そうにも貸せない、固定資産税や草刈りなどコストばかり払い続ける不動産のことです。
今回は、負動産の定義と放置するリスク、相続時の選択肢について解説します。私は不動産で悩める方、主として地主さん・アパートなどの賃貸不動産オーナーといった方向けに、その問題解決型パートナーとして常に何ができるかを一緒に追求し続けてきました。その見解も交えてお話します。
不動産コンサルタント(相続対策専門士)/宅地建物取引士
津田 真実
[株式会社リアルブレーン]
負動産とは、不動産を所有することで負担となる物件を指します。通常、不動産は資産と見なされるものです。しかし、管理費や税金などのコストがかさむ、売却が難しくかえって所有者に負担を与えるなどのマイナスを産む物件のことを負動産と呼びます。
特に、地方にある空き家や、価値が著しく下がった土地などが代表的です。これらの不動産は、所有しているだけで固定資産税がかかるほか、適切に管理しなければ行政からの指導や罰則が課されることもあります。
負動産問題が注目される背景には、人口減少や都市部への人口集中が関係しています。地方の物件は需要が低下し、空き家の増加や地価の下落に拍車をかけています。
代表的な例として、リゾート地の別荘やマンションなどの、バブル時代に資産として購入された不動産がそれです。時代が変わり、地方から都市部へと人口が集中したことで、それまで資産価値を求められていた地方の物件が価値を落としているのです。
こうした状況が進む中、相続によって思いがけず負動産を手にする人々が増えており、適切な対策が求められています。自ら購入することはなくとも、相続を通じて負動産問題に直面してしまう人は少なくありません。
負動産を放置していると、次のようなリスクにさらされる可能性があります。
それぞれ詳しく見てみましょう。
負動産を所有すると、固定資産税や都市計画税などの税負担が継続的にかかります。不動産である以上、税金がかかってしまうのはどのような状況でも同じです。仮にその不動産を活用できなかったとしても、所有している限りこれらの税金は免れません。
さらに、空き家などの建物であっても、草刈りや屋根外壁のメンテナンスも必要です。老朽化が進むと修繕や取り壊しの費用も発生するでしょう。このように、税金だけではなく、管理にもコストがかさんでしまうのです。
負動産を放置すると、法的リスクも存在します。空き家が放置されたまま劣化すると、倒壊や周囲への悪影響を及ぼす可能性があり、自治体から特定空き家に指定されることがあるのです。
特定空き家に指定されると、行政による強制撤去や、過料が課せられる可能性があります。資産価値がなく、資産にならない負動産を所有している方は早めに対策を講じる必要があります。
相続によって負動産を受け継ぐと、相続税も発生する可能性があります。また、不動産を売却しようとしても買い手がつかず、長期間にわたって保有せざるを得ない場合も多いでしょう。
特に相続人が複数いる場合は共有名義になることが多く、意思決定がスムーズにいかない場合もあります。共有名義になってしまうと、売却する時に名義人全員の同意が必要となるためです。
このように、負動産はさまざまなリスクを孕んでいることがあります。不動産としての資産価値だけでの判断だけではなく、あらゆるリスクを考慮して相続するか否かを決めなければなりません。
負動産を相続した場合、いくつかの対策が考えられます。ここでは代表的な選択肢として、以下の3つを解説します。
詳しく見てみましょう。
まず検討すべきは、不動産の売却です。市場価値があるかどうかを確認するために、まずは不動産会社に査定を依頼します。価値があれば、売却によって負動産から解放される可能性があります。
また、投資用不動産として運用するのも考え方のひとつです。公的年金をはじめとする社会保障制度が徐々にほころびを見せ始め、未来が厳しいのはご承知のとおりです。資産形成の一環として不動産を投資に利用するのは、今や不自然なことではありません。
しかし、意外なことに、ほとんどのケースで物件の価値の分析・検証がなされていないのが現実です。目の前の節税には効果があったかもしれないが、家賃収益の積算と物件価値のトータルで勘案すると、儲かるどころかマイナスになっているケースが多いのです。この点を踏まえ、売却・投資をするかどうかを判断する必要があるでしょう。
とある地主さんのケースで説明しましょう。時価1億円の土地上に1億円の建築費をかけてアパートを建てたとした場合、合計2億の投資をしたことになります。しかし、市場では2億円の価値で取り扱いません。
物件価格は、その不動産からいくらの賃料収入が見込めるか、その不動産が数年後いくらに値上がりすると予測できるのか、という期待によって決まります。あくまでイメージですが、下記のようになるでしょう。
市場の期待利回り7%の場合の市場価格 ⇒ 約1億1,400万円
※年収800万円と仮定した場合
あくまでシミュレーションですが、上記の例では資産が8,600万円も目減りしたことになります。
よく、「相続税対策でアパートを建てれば資産が圧縮できて節税に繋がる」とのセールストークを聞きます。しかし、節税額以上に資産価値が目減りすると、本末転倒になることを忘れてはいけません。節税目的の安易な不動産投資は、非常に危険です。
売却が難しい場合には、他の選択肢を検討する必要があります。たとえば、以下のような手段が考えられます。
いずれの場合もお金には変わらず、相手方の同意が必要という課題はあります。しかし、寄付先や譲渡先の同意を得られれば、維持コストなどの不安を抱えずに済みます。
負動産を管理する負担を軽減するために、不動産管理会社や特定法人に管理を委託することもひとつの手です。負動産の管理を他者に移行することにより、維持費や手間を減らすことができる可能性があります。
ただし、一定の管理費用は発生するため、トータルでのコストは検討する必要があります。自分が管理する場合とそうでない場合のコストを慎重に検討する必要があるでしょう。
先の章でも触れたとおり、負動産を相続する際の選択肢として相続放棄があります。相続放棄をすることで、負動産の所有者にはならず、税金や維持費の支払い義務もなくなります。
しかし、相続放棄の手続きには期限があり、相続開始を知ってから3か月以内に行わなければなりません。また、相続放棄をすると他の財産もすべて放棄することになるため、慎重に判断する必要があります。
では相続放棄をしない場合はどのような手続きが必要になるのでしょうか。
2024年4月より、相続登記が義務化されました。これにより、正当な理由がなく相続後の不動産登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科されることになります。また、この法律は過去3年以内まで適用されるため、注意が必要です。
相続登記を怠ると、不動産の名義が曖昧になり、後々の売却や処分がさらに難しくなる可能性があります。特に、相続人が複数いる場合は早急に登記を済ませ、所有者を明確にすることが重要です。今すぐ売却せずに相続する場合でも、相続登記は必ず済ませておきましょう。
負動産を相続する場合は、かかる維持コストと売却価格、もしくは不動産投資の収益をしっかりと判断して相続するか否かを決定する必要があります。そこで建ててよいのか、建てて良いのであればどの程度のものなのか、リスクの許容範囲かどうかなどをしっかりと専門家に相談しましょう。
既に建てられたアパートを所有している場合においても今からでも遅くありません。一度リセットして資産状況を分析されることを、ぜひおすすめします。というか必ずやってください。きっとお客様の事情に合った課題と対策が見えてくるはずです。負動産の相続で損をしないよう、慎重に判断することが重要です。
不動産コンサルタント
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