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相続した不動産を売却したときにかかる税金は?節税についても解説


更新日: 2024 . 09.1

遺産相続で不動産を相続した際、不動産として所有し続けるのではなく、売却してお金に換えてしまうのも一つの方法です。特に、自分で管理・運用できる見込みがない不動産は、所有し続けても固定資産税などがかかる一方になりがちです。そのため、手離したほうがメリットが大きいと言えるでしょう。しかし、売却した際の税金額や、具体的な売却方法などがわからないという人は少なくありません。

本記事では、遺産として相続した不動産を売却した際にかかる税金などについて解説します。参考にして、遺産相続を最も良い形で終わらせましょう。

担 当
棚田秀利のプロフィール写真

相続税の申告・節税対策や生前贈与の専門家です


税理士/宅地建物取引士

棚田 秀利

[棚田秀利税理士事務所・相続税申告相談プラザひろしま]

相続した不動産を売却したときにかかる6種類の税金

相続した不動産を売却する際にかかる税金は、6種類です。以下を参照してください。

  • 相続税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 譲渡所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

具体的な額は状況によって異なります。

相続税

相続税とは、不動産を含む遺産全体にかかる税金です。遺産相続時、正味の遺産金額が基礎控除額を上回った場合に支払う必要があります。具体的な計算式は、以下のとおりです。

相続税=(正味の遺産金額-基礎控除額)×税率
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば正味の遺産金額が1億円、法定相続人が1人だった場合を考えてみましょう。金額を当てはめると、基礎控除額は3,600万円となります。正味の遺産金額と差し引いて、課税遺産金額を算出すると、6,400万円となります。6,400万円の税率は30%です。加えて700万円の控除がかかるため、金額は以下のとおりです。

相続税=6,400万円×30%-700万円
=1,920万円-700万円
=1,220万円

よって、相続税は1,220万円となります。

具体的な税率や、税率に対する控除額は、国税庁の「相続税」のページより確認できます。税率は課税遺産金額によって変動するため、自分の状況と照らし合わせて確認しましょうなお、正味の遺産金額が基礎控除額を下回った場合、相続税支払いの必要はありません。

登録免許税

登録免許税とは、不動産の所有権が被相続人から相続人に移る際にかかる税金です。具体的な計算式は、以下のとおりです。

登録免許税=不動産の価格×登録免許税率

登録免許税の税率は、名義変更時に行う相続登記の種類により変動します。以下を参照してください。

  1. 土地の所有権移転登記(売買による移転):2.00%
  2. 土地の所有権移転登記(相続による移転):0.40%
  3. 住宅の所有権移転登記(中古住宅を売買により取得した場合):2.00%
  4. 住宅の所有権移転登記(相続による移転):0.40%

遺産相続の場合は2と4のどちらか、あるいは両方に当てはまります。土地と建物を両方相続する場合は、それぞれ0.4%ずつかかるため、注意してください。

印紙税

印紙税とは、契約書・領収書などにかかる税金です。不動産を相続するだけでは発生しませんが、売却しようとすると、売買契約書に対して発生します。印紙税額は、契約金額に応じて変動します。つまり、いくらで売却できたかによって金額が決定するのです。具体的には以下を参照してください。

税額が決定したら、必要な金額分の印紙を売買契約書に貼り、消印して納税完了となります。なお、不動産売買契約書に必要な印紙税は、平成26年4月1日~令和9年3月31日まで軽減措置が適用されます。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益にかかる、所得税の一種です。一般的には、後述する住民税と合わせて支払い義務が発生します。

譲渡所得税の計算式は、以下のとおりです。

譲渡所得税=①譲渡所得金額-(②取得費+③譲渡費用+④特別控除)×税率

①の譲渡所得金額とは、売却して得た利益です。

②の取得費は不動産を購入する際にかかった費用です。具体的には、被相続人が該当不動産のために支払った購入代金や購入手数料などです。さらに、相続人が相続時に支払った登記費用、登録免許税等も加算可能です。なお、不動産に建物が含まれる場合は、被相続人が不動産を所有した時点からの減価償却費を、取得費から差し引いて計算します。

③の譲渡費用とは、不動産売却時にかかった、仲介手数料や測量費などの経費です。ただし、不動産の修理費などは含まれません。

④の特別控除は、一定の条件下で不動産を譲渡した際に発生します。遺産相続からの不動産売却で、適用できる可能性がある控除の詳細は後述します。

②~④の金額がすべて算出できたら、①から差し引き、さらに税率を乗じて、計算完了となります。税率は、以下のように不動産の所有期間によって変動します。

  • 短期譲渡取得(不動産取得時より5年以内に売却する場合)→30%
  • 長期期譲渡取得(不動産取得時より5年を超えて売却する場合)→15%

そのため、ある程度の期間所有していたほうが、譲渡所得税は安くなります。ただし、譲渡所得税のことだけを考えて、活用しない不動産を所有し続けるのはおすすめしません。不動産を売却するかどうか迷ったら、さまざまな条件を総合的に踏まえて判断してください。

住民税

住民税は、前年の所得によって変動する税金です。不動産を売却すると、一時的とはいえ所得が増えるため、翌年の住民税も増えるのです。具体的な金額は、譲渡所得と同様に譲渡所得金額に税率を乗じて計算します。税率は以下のとおりです。

  • 短期譲渡取得(不動産取得時より5年以内に売却する場合)→9%
  • 長期期譲渡取得(不動産取得時より5年を超えて売却する場合)→5%

復興特別所得税

復興特別所得税とは、東日本大震災に対する復興の財源の確保をするために設定された、所得税の一種です。税率は2.1%で、本来の所得税率に加算されます。なお、永続的にかかるわけではなく、令和19年(2037年)に終了となる予定です。

相続した不動産を売却するときに活用できる5つの特例

相続した不動産を売却する際、税金額を抑えるのに活用できる特例は以下の5つです。

  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
  • 平成21年および平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
  • マイホームを売ったときの軽減税率の特例

ただし、すべての特例が必ず適用できるとは限りません。自分の状況と特例の条件を、しっかり確認しましょう。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは、不動産を相続した際の相続税を取得費に加算し、譲渡所得税を抑える特例です。ただし、本特例を適用する際は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

また、相続税全額を加算できるわけではありません。実際には、以下の計算式によって算出された額を加算します。

取得費に加算できる税額=相続税額×対象となる財産の相続税評価額/(相続税課税額+債務控除額)

計算は財産ごとに行います。従って、売却予定の不動産が複数ある場合は、それぞれ個別に計算が必要です。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

居住用に利用していた住居を売却する場合は、3,000万円の特別控除が適用できる可能性があります実際に適用する際は、以下の条件をすべて満たす必要があるため、確認してください。

  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

(注)住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件すべてに当てはまることが必要です。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。

ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

  • 売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算および繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
  • 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
  • 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

主に適用される場面は、相続人と被相続人が生前住居を共にしており、被相続人の死亡を機に相続人が住居の売却を決めた場合です。ただし、本特例を適用する時点から3年以内に他の特例を適用したり、明らかに節税目的での入居とみなされたりする場合は、適用が認められません。本当に当てはまるかどうか不安な場合は、専門家にアドバイスを仰ぐのがおすすめです。

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、被相続人の死亡を機に住居が完全に空き家となる場合の特例です。条件を満たせば、売却時に3,000万円を上限とした控除を受けられます。本特例は、適用条件だけでなく空き家に対する条件もあるため、両方を満たしているか確認してください。

【空き家の条件】

  • 昭和56年5月31日以前に建築された
  • 区分所有建物登記がされていない建物である
  • 相続の開始の直前において被相続人以外誰も居住していなかった

【適用の要件】

  • 被相続人が住んでいた不動産を相続し売却した
  • 相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した
  • 売却代金が1億円以下である
  • 売った相手が親子や夫婦など近親者でない
  • 他の特例を受けていない

上記は、かいつまんでまとめた要件です。本特例は条件が比較的細かく、慣れない人には確認が困難であるため、実際に適用できるかどうかは、専門家に調べてもらったほうが良いでしょう。

平成21年および平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除

平成21年および平成22年に取得した土地等に対しては、売却時1,000万円の特別控除が適用できるケースがあります。2008年に起こったリーマンショックの影響を受け、不動産流通が鈍化するのを防ぐ目的で定められました。適用の要件は以下のとおりです。

  • 平成21年1月1日から平成22年12月31日までのあいだに土地等を取得していること
  • 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること
  • 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと

*特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

  • 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。
  • 譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと。

5つ条件がありますが、これから売却を行う場合、上から2番目は自動的に満たされるため考慮する必要はありません。

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

マイホームを売却する際にも、軽減税率に対し特例が適用可能です。特例の適用要件は、以下を参照してください。

  • 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること

*家屋を取り壊した後土地を売却する場合は、別途追加の条件を満たす必要がある

  • 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
  • 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
  • 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと。ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます
  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと

上記にも記載がありますが、本特例は居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と併用できます。そのため、可能であれば積極的に両方を利用したほうが良いでしょう。

相続した不動産の売却で特例を活用するなら確定申告が必要

相続した不動産の売却で、以下の特例を活用する際は、確定申告が必要となります。

  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
  • マイホームを売ったときの軽減税率の特例

特例の手続きは、確定申告の書類を用意し、そこに特例適用のための計算書などを添えて提出するのが一般的です。そのため、特例を適用したい場合は、まず確定申告の作業をこなす必要があります。

不動産を相続してから売却するまでの一般的な流れ

不動産を相続してから売却するまでは、以下のような流れになるのが一般的です。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人の人数と順位の確認(遺言書が無い場合は法定相続人の確認)
  3. 相続の対象となる財産の確認
  4. 遺産分割協議(遺言書が無い場合)
  5. 相続登記(相続財産に不動産がある場合)
  6. 相続税の申告と納付
  7. 不動産の査定依頼
  8. 媒介契約の締結
  9. 売却活動
  10. 買主との売買契約の締結
  11. 引渡し・決済
  12. 確定申告・特例適用

上記のステップにおいて、1~6の部分はすべて相続に関するものです。そのため、不動産を売却しない人はステップ6でタスクが終わります。

7~12は、不動産売却にかかるステップです。本記事では売却に焦点を当てて解説しましたが、相続から売却まで通しで流れを確認すると、全部で12ものステップを踏む必要があるのがわかるでしょう。

実際に遺産相続が始まると、さまざまなことに時間や手間を取られます。のんびり構えてしまうと、締め切りが設定されている手続きが間に合わなくなる可能性もあるため、できるだけ各ステップをスピーディーに済ませるのがおすすめです。

相続した不動産の売却に関する手続きははなまる相続に相談を

不動産を相続し、売却に関する手続きの相談をご希望の場合は、専門家への相談がおすすめです。現実問題として、遺産相続に慣れない人が不動産の相続~売却までの手続きを自力で行うのは、困難です。行うべきタスクを実行するのに長期的な手間がかかるうえ、書類不備などのミスから、手続きが進みが遅くなるケースもあります。

はなまる相続であれば、売却に関する手続きをワンストップでご相談いただけます。売却だけでなく相続手続きについてもサポートができますし、そもそも不動産を売却すべきかどうかなど、各種お悩みに対する相談も可能です。不動産のことに限らず、相続関連でお悩みの場合はお気軽にご連絡ください。

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税理士

棚田 秀利

Hidetoshi Tanada

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