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生前相続とは?相続との違いやメリットを徹底解説


更新日: 2024 . 11.1

生前相続という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、生前相続という言葉は法律上存在せず、正しくは「生前贈与」です。生前贈与は、相続税対策として注目されています。

本記事では、生前相続の基礎知識やメリット、実行する際の注意点を解説します。贈与と相続、どちらがご自身に適しているかと悩んでいる方、生前贈与について深く知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

担 当
棚田秀利のプロフィール写真

相続税の申告・節税対策や生前贈与の専門家です


税理士/宅地建物取引士

棚田 秀利

[棚田秀利税理士事務所・相続税申告相談プラザひろしま]

生前相続という言葉は法的には存在しない

生前相続という言葉は一般的に使われていますが、法律上は存在しません。正確には「生前贈与」と呼ばれます。相続は亡くなった人の財産を引き継ぐことを指しています。生きているあいだでの財産の譲渡は「贈与」となるため、生前贈与が正しい言葉です。

この違いは単なる言葉の問題ではありません。相続と贈与では、財産の引き継ぎ方や課税方法が異なります。そのため、財産の移転を考える際には、違いを理解することが重要です。

相続と贈与の違いは財産を引き継ぐタイミング

相続と贈与のもっとも大きな違いは、財産を引き継ぐタイミングにあります。相続は被相続人の死亡後に行われるのに対し、贈与は生存中に実施されるのが特徴です。

財産を引き継ぐタイミングの違いは課税にも大きく影響し、相続の場合は相続税、贈与の場合は贈与税が課されることとなります。

税金の種類が異なるだけでなく、計算方法や税率も異なります。財産移転の方法を選ぶ際には、税金面でのメリット・デメリットを十分に理解し、慎重な判断をしましょう。

生前贈与をする5つのメリット

生前贈与するメリットには、以下の5つが挙げられます。

  • 贈与したい財産と相手を自分で選べる
  • 税制改正により税金が上がるリスクを回避できる
  • 贈与する時期を自分で選べる
  • 相続税を軽減できる
  • 減税効果が蓄積する

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

贈与したい財産と相手を自分で選べる

生前贈与の大きな利点は、自分の意思を直接反映できることです。誰にどの財産を贈るかを自分で決められるため、特定の人に特定の財産を確実に引き継ぐことができます。

相続の場合、遺言書を作成していても、相続人間でトラブルが発生する可能性があります。一方、生前贈与なら、贈与者が存命中に家族に説明し、理解を得やすいでしょう。

ただし相続時に、遺留分侵害の問題が生じる可能性があります。遺留分とは、法定相続人に保証された最低限の遺産取得分のことです。贈与によって遺留分が侵害された法定相続人がいた場合、遺留分侵害額を請求される可能性があるでしょう。

しかし、その場合でも金銭的な請求に留まり、贈与した財産自体の所有権は受贈者が保持できます。

税制改正により税金が上がるリスクを回避できる

税制は毎年のように見直しが行われ、将来的には現在よりも不利な改正が実施される可能性があります。このような状況下で、生前贈与は「贈与時点の税制」が適用されるため、相続における節税の効果など、現在のメリットを確実に享受が可能です。

特に、贈与税の暦年課税においては、1年ごとに課税関係が清算されます。つまり、贈与を行った年の税制で課税関係が決定されます。今後の税制改正による不利益を避けたい場合は、早めの生前贈与が賢明な選択だといえるでしょう。

贈与する時期を自分で選べる

生前贈与は、贈与のタイミングを自由に選べます。特に、評価額が変動する可能性のある不動産や有価証券といった財産を贈与する際に大きなメリットとなり得ます。

評価額が低い時期に贈与できれば、贈与税を抑えることが可能です。また、将来的に価値が上昇すると予想される財産を早めに贈与することで、相続税の負担を軽減できる可能性もあります。

贈与後3年以内に相続が発生した場合、その贈与分は相続財産として加算されるというルールがあります。しかし、この場合でも贈与時の評価額が適用されるため、贈与後の評価額上昇の影響は受けません。適切なタイミングを選ぶことで、相続税の節税につなげられるでしょう。

相続税を軽減できる

生前贈与の活用で、将来の相続税を軽減できる可能性があります。これは、生前贈与によって相続時の財産を減らせるためです。

相続税は、相続時の課税遺産総額に対して課税されます。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える部分に対して課税されるため、生前贈与によって相続財産を減らすことで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

例えば、法定相続人が配偶者と子ども1人の場合、基礎控除額は4,200万円です。生前贈与を活用して相続財産をこの金額以下に抑えられれば、相続税はかかりません。

減税効果が蓄積する

生前贈与には、年間110万円までの基礎控除があります。基礎控除額までの贈与であれば、贈与税が非課税です。基礎控除を毎年活用することで、長期的に見れば大きな節税効果が得られます。

贈与税は1年ごとに課税関係が清算されるため、毎年計画的に贈与を行うことで、効果が蓄積していきます。例えば、10年間にわたって毎年110万円ずつ贈与すれば、合計1,100万円の財産を非課税で移転でき、将来の相続税負担を大幅な軽減に期待できるでしょう。

生前贈与は課税の方法を選択できる

生前贈与を行う際には、以下2つの課税方式から方法を選択できます。ただし、相続時精算課税については贈与者と受贈者の制限があるため、誰もが選択できる方法ではありません。

  • 相続時精算課税
  • 暦年課税

それぞれに特徴があり、どちらを選択するかによって税負担が変わってきます。各制度について、詳しく見ていきましょう。

相続時精算課税

相続時精算課税制度は、生前贈与と相続した際の財産を一体化して課税する仕組みです。受贈者は2,500万円まで非課税で贈与を受けられます。

贈与者が亡くなった際、今までに受けた贈与の額を、贈与時の価額で相続財産に加算し「相続税」として一括で精算が必要です。贈与時の価額で加算となるため、相続税の節税に期待できます。

ただし、相続時精算課税制度を利用するには、贈与者と受贈者の条件に当てはまっている必要があります。詳細は、以下のとおりです。

【相続時精算課税制度の詳細】

相続時精算課税制度のメリットは、2,500万円までの特別控除が設けられていることです。大きな金額の贈与を考えている場合におすすめです。

また、2024年1月からは、年間110万円の基礎控除が創設されました。この基礎控除は特別控除(2,500万円)の対象外であり、相続発生時に相続財産に加算されません。

相続時精算課税制度を選択すると、同一の贈与者から贈与を受ける場合は暦年課税に戻すことはできません。

暦年課税

暦年課税は、1年間(1月1日から12月31日まで)の贈与額に対して課税する方式です。年間で110万円の基礎控除があります。110万円を超える価額に対して課税されます。

10〜55%内の8段階で超過累進税率が適用となる点、どのような贈与者・受贈者でも制限なく適用になる点が、暦年課税の特徴です。詳細は、以下のとおりです。

【暦年課税の詳細】

【税率の詳細】

暦年課税のメリットは、毎年基礎控除額の範囲内で贈与を行うことで、長期的に大きな節税効果が得られる点です。一方で、高額の贈与を行うほど税率が高くなる点には、注意が必要となります。

相続時精算課税と暦年課税のどちらがよいかは状況により異なる

相続時精算課税と暦年課税、どちらの制度を選択すべきかは一概にいえません。それぞれに特徴とメリットがあり、最適な選択は各家庭の状況によって異なります。

例えば、高額の財産を一度に贈与したい場合は相続時精算課税が有利かもしれません。一方、長期的に少額ずつ贈与していく予定なら暦年課税が適しているといえるでしょう。また、将来の資産価値の変動予測や、贈与者・受贈者の年齢、家族構成なども考慮する必要があります。

最適な選択をするためには、専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。税理士や相続専門の弁護士などへの相談で、各家庭の状況に最適な贈与の方法を見つけることができるでしょう。

生前贈与を行う際におさえるべき2つのポイント

生前贈与は、税務上における一定の要件を満たさなければ、生前贈与と認められません。以下2つのポイントを、必ずおさえるようにしましょう。

  • 双方の合意をとる
  • 贈与契約書を作成する

これら、生前贈与を行う際のポイントを、詳しく解説します。

双方の合意をとる

生前贈与は、贈与する側(贈与者)の意思だけでは成立しません。受け取る側(受贈者)も贈与に合意する必要があります。双方の合意は、単に形式として行うものではありません。受贈者が贈与の事実を認識し、それを受け入れているという証拠になります。

特に、将来的に相続に関する争いが生じた場合、この合意の存在が重要な意味を持つ可能性があります。また、受贈者が贈与の事実を認識していることで、贈与税の申告義務が生じることも理解できるでしょう。

贈与契約書を作成する

贈与税の基礎控除等を適用する際に、贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書には、以下5つの要素を明確に記載する必要があります。

  • 贈与者:誰が贈ったか
  • 受贈者:誰が受け取ったか
  • 贈与時期:いつ贈与したか
  • 財産内容:贈与した財産の詳細内容
  • 贈与方法:どのような方法で贈与したか

例えば、生前贈与として親から子の口座にお金の振り込みを毎年行っている場合、子ども名義の預金も親の預金だとみなされる場合があります。

贈与契約書を作成しておくことで、双方の合意のもとで贈与が行われたという明確な証拠となります。将来的な税務調査や相続時のトラブルを防ぐ役割も果たせるでしょう。

生前贈与をする際は老後の生活費不足に注意

生前贈与は相続税対策として有効な方法ですが、ご自身の将来の生活を脅かすものであってはいけません。贈与を行う際は、自身の老後の生活費や介護費用などが十分に確保できているかを慎重に検討する必要があります。

人生100年時代といわれる昨今、ご自身が想像していた以上に長生きする可能性も十分あり得ます。また、医療の進歩により高額な医療費や介護費用が必要になるかもしれません。贈与をしすぎて、結果的に子どもや孫の世代に経済的な負担をかけることになっては本末転倒です。

生前贈与は単独で考えるのではなく、老後の資金計画とあわせて検討することが重要です。どれだけの資産を残し、どれだけを贈与するかのバランスを慎重に考える必要があるでしょう。

生前贈与に関する疑問や不安は「はなまる相続」に相談を

生前贈与は、相続税対策として効果的な方法ですが、同時に複雑で慎重な検討が必要な課題でもあります。本記事では生前贈与の基本的な概念や主なポイントをご紹介しましたが、実際に生前贈与を行う際には、さらに詳細な検討や専門的な知識が必要となります。

生前贈与は、単なる税金対策ではありません。大切な資産を次の世代に引き継ぐ重要な手段です。しかし、適切に行わなければ、思わぬトラブルや税務上の問題を引き起こす可能性もあります。

一般社団法人はなまる相続は、弁護士や税理士・司法書士など、贈与・相続のプロフェッショナルが在籍しています。贈与者様の想いを大切にしながら、法的・税務的に適切な生前贈与の実現をサポートします。

贈与・相続に関する悩みや不安がある方は、ぜひはなまる相続にご相談ください。贈与者さまご自身だけでなくご家族の未来のため、最善の解決策を見つけるお手伝いをいたします。

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税理士

棚田 秀利

Hidetoshi Tanada

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