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相続コラム はなまる知恵袋

相続の前に知っておきたい「不動産の時価」


更新日: 2020 . 08.23

担 当
河井猛のプロフィール写真

不動産価格や賃料の妥当性を証明する専門家


不動産鑑定士

河井 猛

[有限会社総合アプレイザル]

相続が発生した時に受け継ぐプラスの財産には何があるでしょう?

 

5つに大きく財産は分類されるかと思います。

 

「土地」、「家屋」、「有価証券」、「現金・預貯金等」、「その他(家財等)」です。

 

国税庁発表の平成30年分相続税の申告状況についてのデータをみてみると、相続財産の金額の構成比は土地が25.0%、家屋が5.0%、有価証券が23.9%、現金・預貯金等が33.7%、その他家財等が12.3%となっています。

 

 

バブル崩壊以降の地価下落を受け、土地の比率はバブル時期の1992(平成4)年の76%から減少基調が続き、現在最低比率を更新続けており、平成27年以降においては、現金・預貯金等に追い抜かれてしまいました。

 

 

とはいえ、家屋と土地を併せた不動産全体でいけば30.0%であり、依然として財産の大きな構成割合の一つとなっています。

 

このように大切な財産の大きな構成割合の一つである土地、家屋の不動産評価の話にはいっていきます。

 

現金・預貯金等などは、単純に集計すればよいだけですが、不動産は取得時点の取得価格ではなく、時価評価しないといけません。

 

財産の大きな構成割合の一つであり、且つ時価評価しなければいけないということですので、相続には「不動産の知識」が必須です。

 

 

相続が発生した時の不動産の評価方法については、国税庁が「財産評価基本通達」というものを定めています。

 

この通達は全国津々浦々で相続又は贈与によって発生する不動産評価の取扱いの統一性を確保することを目的として定められています。

この通達によれば、土地の評価は2つの方式(路線価方式、倍率方式)のいずれかで行っていきます。

 

■路線価方式

路線価が配置されているエリアであれば、路線価評価を行います。

前面道路に付設されている路線価を基準として、対象地の個性に伴う微調整(たとえば、角地・形状・間口が狭い等々)を行い、対象地の数量を乗じて、評価額を算出します。

 

「路線価方式=路線価×各種補正率×土地面積」

 

■倍率方式

路線価が配置されていないエリアであれば、倍率評価を行います。

 

市役所から毎年送付されてくる固定資産税課税明細書記載の固定資産税評価額に評価倍率表に記載の倍率を乗じて、評価額を算出します。

 

「倍率方式=固定資産税評価額×倍率」

 

上記2方式に則り、相続時には簡便的に不動産評価が行われていきます。

 

ただあらゆる財産の中でも極めて個別性が高いといわれているのが不動産です。

 

一元的なルールではどうしても時価と乖離する局面が生じてきます

 

ここで時価と大幅に乖離した土地の評価事例を二つ程ご紹介させて頂きます。

 

相談を受けた土地は、中心部から車で約30分程度の郊外に位置する、傾斜度30~35°程度の急傾斜の現況山林でした。

 

なぜこの山林が評価上問題になったかというと、市役所の都市計画課にて確認したところ、市街化区域に指定されていたからです。

 

前記の財産評価基本通達では、市街化区域内の山林の評価については、「山林が宅地であるとした場合の価格から宅地造成費に相当する金額を控除して査定する」との記載がなされています。

 

宅地であるとした場合の価格については、郊外といえども、路線価ベースで坪20万くらいのエリアですので、坪20万を基準に査定した宅地価格から造成費相当額を控除していきます。

 

ただやはり、スタートが坪20万ですので、相応の造成費を控除しても、総額で5千万くらいの評価が出てしまうというシュミレーション結果です(ただの山林が5千万)。

 

確かに高度成長期からバブル期にかけては、外延的な市街地の発展に伴って、こうした山林が開発される可能性が当時はあったかもしれません。

 

しかし最近地方では特にですが、人口減少から逆に中心部に人が集まってくる都心回帰現象が見受けられています。

 

つまり、郊外の山林が開発される時代ではなく、この土地について言えば、財産評価基本通達の宅地化を前提とする評価の考え方は現実性に乏しいということになってしまいます。

 

実際知り合いの不動産デベロッパーの方に大体の不動産の概要を伝えて、ヒアリングしたところ、多額の造成費をかけてそんな土地を開発するリスクを抱える業者は殆どいないだろうとのことでした。

 

開発される可能性が極めてゼロに近い山林が前記シュミレーションの様な評価額が付くはずがありません。時価は推して知るべしです。

 

他方、不動産評価とは不思議なもので、一つ目の事例のように評価を下げて喜ぶ方もいらっしゃる局面もあれば、評価を上げて喜ぶ方がいらっしゃる局面もあります。

 

相談を受けた土地は、中心部から徒歩圏内にある個人所有の300坪くらの大きな土地でした。

 

相続人間で遺産を分割していく中で、不動産は共有にするのではなく、価格賠償する方向で話が進んでいました。そこで不動産の評価が問題となりました。

 

なぜ問題になったかというと、路線価が異様に低いからでした。路線価は標準的な土地(今回の土地のある地域であれば、50坪程度)を想定して付設されているため、相談を受けた土地の様にマンションやホテルの開発業者が欲しがるような土地は基本的には想定していません。

 

当然ですが、開発業者は事業採算性から不動産を仕入れます。

 

建築する建物の概略設計を行い、土地の仕入値、建築費、造成費、販売経費、借入金利等々を販売収入から控除して、いくら利益が捻出出来るかというような発想になります。

 

もちろん路線価などは気にしていません。結果として、路線価の何倍で購入したとか、そういう話にしか過ぎません。

 

実際知り合いの不動産デベロッパーの方に大体の不動産の概要を伝えて、ヒアリングしたところ、この土地であれば、路線価の2~2.5倍程度であったとしても採算がとれるとのことでした。

 

開発業者が欲しがるような土地が一般売買市場に出して、路線価で売買されるはずがありません。これまた時価は推して知るべしです。

 

このコラムでは路線価と時価が乖離するケースを2つほど、簡単に紹介させてもらいました。

 

不動産だからこそ、どうしてもこのような話が出てきてしまいます。このコラムを読んだ皆さんが、自分の持っている不動産はどんな性格のものなのか、ふと考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。

 

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不動産鑑定士

河井 猛

Takeshi Kawai

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  • 路線価評価が時価と乖離する場合の適正評価
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加藤 泰

Yasu Kato

遺言・民事信託・遺産分割協議の対応

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